気になる一点

2013年12月13日
ロンドン滞在中ナショナルギャラリーロンドンには三回ほど足を運んだ。無料の上に、都心にあるので訪れやすい。多くの名画の中で気になる一点がある。ドローシュ作「レディ・ジェーン・グレイの処刑 The Execution of Lady Jane」 1833年 オイル・オン・キャンバス 246x297cm.」 ロンドン留学中の夏目漱石も愛好した名画で小説「倫敦塔」に反映されている。

処刑されるのはイングランド最初の女王を宣言したしたジェーン・グレイ。但し王座に座ったのはたったの9日間。半年後には処刑されてしまう。まだ16歳と4ヶ月、花も恥らう乙女だった。こんなけなげで、可愛い少女の首を刎ねるとは歴史は時に残酷だ。若き元女王はやはり女王。少しも取り乱した様子がない。覚悟を決めて氏を受け入れている。円柱にすがりつき、背中を見せて泣く侍女と失神しかかっている侍女とは全く対照的だ。2人の男性は極めて事務的だ。中年の司祭は憐憫の情もなく事務的に首切り台に導こうとしている。処刑人はそれを冷ややかにそれを待っている。やはり泣き喚き、失神しそうな侍女とは対照的だ。
実際の処刑はどうだったのだろうか。中野京子作「怖い絵」によると、現実は惨いものだった。処刑はロンドン塔の広場で公開で行われた。当時の王侯貴族の斬首は民衆に大人気の見世物だったから大勢がつめかけ残酷を楽しんだ。胴から切り離された首は処刑人に髪をつかまれ、民旬によく見えるように高々とと揚げられたし、遺体はその場に4時間も放置されたままだった。