経済的危機 ハンガリーテレコムオーケストラの現状

ハンガリーテレコムシンフォニーオーケストラの第一ヴァイオリン奏者の角谷聡子さんから楽団の現状が送られてきた。読んでいただければ幸いです。
ハンガリーテレコムシンフォニーオーケストラから皆様へのお願い 
いつもお知らせメールをお読みいただきましてありがとうございます。
今日は、現在のハンガリーテレコムシンフォニーオーケストラの置かれている危機的状況を皆さまにご理解いただきたくこのメールをお送りさせていただきます。最後までお読みいただけると幸いです。
現在ハンガリーテレコムシンフォニーオーケストラは未曽有の経済的危機に直面しており、給料の75パーセントカットで、税金や社会保険料、健康保険料などをさし引くと、ほとんどの団員の手元にはいくらも残らないという状態が、もう3か月も続いています。
原因は幾つかありますが、一つはメインスポンサーであるハンガリーテレコムがその支援額を今までの半分にしたことにあります。
そして、オーケストラの名前にハンガリーテレコムという企業名が入っていることから、なかなか他のスポンサーを得ることができず、
さらに、ハンガリー国内のすべてのオーケストラが十分に得ることができた国からの支援金もハンガリーテレコムだけは、雀の涙ほどの額しか受けることができませんでした。
しかし、そんな中でも3年前に音楽監督に就任したケッレル・アンドラーシュの指導のもと、プロオーケストラとしては例外的な、コンサート前2週間という綿密なリハーサルと、厳しいトレーニング、短期間ごとの契約更新など様々な試みを行い、(残念ながらその厳しさに耐えられずにオーケストラを後にした団員も多くいましたが)私たちは確実に飛躍的な成長を遂げてきました。
昨年の2週間にわたるドイツ演奏旅行では、ケルンを始めバイロイト、シュトゥットゥガルトなどドイツ各都市でコンサートが大成功に終わり、各紙で絶賛されました。
ホストであるドイツの音楽事務所はツアー第1回目のコンサートの後、すぐに次のドイツツアーへの契約を決めました。
また、ハンガリーを代表する世界的な作曲家、クルターク・ジュルジは、10月8日のコンサートでベートーヴェンの「田園」を聴き、「これこそ真に音楽をするに値する演奏だ」と絶賛しました。
ピアニスト、指揮者のコチシュ・ゾルターンは、奥様のエリカさんがショスタコヴィッッチのピアノ協奏曲を私たちと共演されたときに、「自分がこのオーケストラと演奏したかった」と高く評価されました。
次の文章は、10月8日のベートーヴェンバルトークシリーズのコンサートの冒頭で音楽監督であるケッレル・アンドラーシュがしたスピーチです。
みなさんは、どうして音楽家が作曲したり演奏したりするか分かりますか。
それは、今日のコンサートのプログラムのテーマでもある、「理想」のためです。
ベートーヴェンバルトークも、一生涯「理想」を追い続けて、作曲したり演奏したりしました。
お金がすべての今日、何か大切なものが忘れられつつあります。
ここにいる団員達は、もう何か月も家族のもとにお給料を持ち帰ることができていません。
それでも、多くの団員がこうして一生懸命演奏を続けています。
それはなぜでしょうか。
「理想」のためです。ここにいる全員が、「将来」を信じて精一杯演奏します。
どうぞお聴きください。
私たちハンガリーテレコムの団員は、若い人も多く、みんな信念を持って音楽に取り組んでいます。
だから、他のオーケストラに移籍すれば安定するとわかっていても、ケッレル・アンドラーシュのもとで意義のある仕事をしたいと、ここに留まる団員が多くいます。
みなさまにお願いしたいのは、今このような状態のオーケストラがあるということを知っていただくこと、
それだけでも大きな力になると思います。
そして、できたら一度そんな私たちの演奏を聴きに来てください。
もう一つ、お知らせがあります。
今までスポンサー探しのネックにもなっていたハンガリーテレコムという名前を、気持も新たに一新します。
新しい名前は、2009年12月8日(火)新ネーム発表記念コンサートにて発表されます。
ぜひ、この記念すべき私たちの再出発をご一緒にお祝いください。
その他、出張演奏などさまざまなニーズに合わせて、クオリティの高いアンサンブルを組むことができます。
フルオーケストラをはじめ、20人程度の小編成の室内オーケストラ、ブラスアンサンブル、弦楽四重奏木管四重奏、パーカッションアンサンブル、など
パーティーやセレモニーなどにご利用ください。
また、スポンサー情報などありましたらお知らせいただければ幸いです。オーケストラの担当の者から改めてご連絡させていただきます。
こんなお願いをメールでお知らせするのは、本当に失礼とは思いましたが、私も団員の一人として何かできないかと考え筆をとりました。
皆さまの温かいご支援を、どうぞよろしくお願いいたします。
ハンガリーテレコムシンフォニーオーケストラ 角谷 聡子